口の機能
私が日々診ている《口腔、こうくう》は他の臓器と同じく非常に重要ですが体の中でも特殊な器官です。
医学的には消化器官の開口部であり(だから口と呼ぶそうです)、食物を胃や腸で消化吸収しやすくするために、味覚や鋭敏な触覚により異物を排除しながら歯で細かくし、唾液と混ぜながら舌で食道へ送る働きをしています。これを咀嚼(そしゃく)、嚥下(えんげ)と言います。
口でも呼吸をもしますが、口呼吸は細菌の侵入経路として望ましくないとされ、呼吸器には分類されません。
又、肉食の野生動物では捕食のための武器としての機能が備わっていますが、人間にとっては会話をするための発音の機能や、笑顔になった時に歯が見えるようにコミュニケーションとしての役割も重要です。
その他としては姿勢や平衡感覚を保つ機能、咀嚼することで脳に血流を送る機能があるとされています。
お口に問題があると・・・
野生動物であれば牙が抜け落ちてしまったら捕食できず弱っていくことは明らかです。
我々人間ではどうでしょうか。
咀嚼がうまくできない箇所があれば、片側の歯に負担がかかり早期に歯の喪失を引き起こします。
更に他の消化器官に負担がかかり内臓疾患を引き起こす可能性もあります。
歯にコンプレックスがあれば大きな口を開けて笑うことができなくなり、ストレス発散の機会が損なわれます。
奥歯が無いまま放置した場合や義歯を入れていても、すり減っていたりしてしっかり咀嚼できない場合には、脳への血流は低下し認知症になる事もあるそうです。
ここからは臨床での経験ですが、かみ合わせが悪いと顎関節症状や片頭痛を引き起こすことが多く見られます。
心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病などの既往がある患者様が進行した歯周病に高確率で罹患されていることは日常的に散見されます。
歯の健康は全身の健康に大きく関わります
上記のことから、歯科で見た目やかみ合わせを整え、虫歯菌や歯周病菌のコントロールを行うことは、お口の悩みを治しているだけでなく、全身の健康に役立っていると言えるでしょう。
治療が進むにつれ笑顔が増えたり、お化粧や服装など身だしなみに気を付けるようになったりと、本来の自分を取り戻されたかのような患者様を見ていると歯医者になって本当によかったと思います。
一生にわたり健康で、美味しく食事ができ、最高の笑顔ができること
この応援ができる事こそ私の歯科医師としての喜びです。(ちなみに私は高校時代、夏でも学ランの応援団でした。)
虫歯を見逃さない、進行している歯周病を見逃さない、ブラッシングが苦手な方に何度でも説明や練習を行う、被せ物のかみ合わせの調整を何度でも丁寧に行う、患者様の健康を家族の健康と同じくらい大事に考える。
こういう基本的なことを大事にして日々診療にあたっております。