見た目、耐久性、歯の切削量、費用などの観点から考えると全てを兼ね備えた材料はありません。
様々な素材の中から虫歯や欠けで失われた歯を修復するものを選択する際に特性を知っておいた方がいいでしょう。
保険が効くものと効かないものという分類もあります。保険適用外のものは費用が高いというイメージがあると思います。
考えられる中で最も良質な素材を用い、十分な時間を確保して行う治療費を保険制度(1~3割負担)を使わないでお支払い頂くので、比較すると大分高いように感じられると思います。
歯科医と患者さんの信頼関係が無い状態では、保険外の治療法を説明しただけで
お金儲け主義なのでは・・と疑われることもあるかもしれません。(泣)
しかし、自費診療の説明を受けたことが無い方もいらっしゃいますし、耐久性や見た目に対しメリットがあるので、
クリニックではそれぞれの特徴を説明し、患者さんに御希望のものを選んで頂くようにしています。
今回は詰め物(インレー)の素材について説明していきます。
(歯全体を覆う被せ物(クラウン)や歯科用レジンによる直接修復(ダイレクトボンディング)とは区別して考えています。)
保険適用の金銀パラジウム合金(銀歯)によるインレー修復
12%の金、20%のパラジウム、50%程度の銀、20%程度の銅とその他の合金です。
費用面では保険適用であるため最も安価で済むというメリットがあります。(最近では金属が高騰し問題になっていますが)
金属ですので
割れることはほとんどなく、
歯を削る量もインレーの中では最小限で済みます。(後述のゴールドと同じくらい)
問題点は、隙間ができ
虫歯が再発している例が多いことです。
原因としては
型どりの材料は保険点数の予算内で収めなければならず、
理想的な精度の高いものは使えないことで適合が甘くなりがちな事が考えられます。
しかし、しっかり磨いて長持ちしている方も多くいらっしゃいます。
審美的には金属色のためよくありません。
化学的には貴金属に比べ不安定です。口腔内から除去したものを観察すると変色してしまっているものが
多い事からも分かります。この性質は
時に金属アレルギーを引き起こすことがあります。
又、デメリットとは直接関係ありませんが、
世界では人体への悪影響を考慮され使用禁止になっている国があります。
費用は全国一律で型どりを含めて1本3000円~4000円(保険点数に準じます、全国一律、点数の改正あり)です。
自費診療の金合金によるインレー修復
75%の金 9%程度の銀 15%程度の銅 その他からできている合金です。(当クリニック使用の18Kの場合)
金属の中では化学的に安定しており、変色はほぼ起こりません。24金(純金)の方がもっと安定していますが、柔らかすぎるため歯科では合金を使用します。
厚みが少なくても割れることはほぼありませんので歯を削る量も最小限で済みます。
自費診療ですので型どりする材料にも寸法安定性が良いものを用いることが出来ます。(クリニックではシリコンラバー印象材を使用)
デメリットは費用が掛かる事と見た目(好きな方もいますが)でしょう。
18カラット金合金によるインレー(小さな詰め物)修復は
当クリニックでは金属使用料によりますが55,000円~65,000 +taxかかります。
(金属の高騰などにより金額は変更する場合があります。)
これには診察代、治療費、詰め物、当クリニック規定の保証が含まれています。
自由診療ですのでクリニックによって値段や型どりの材料、保証の有無は様々です。
ちなみに私は自分の歯をインレー治療してもらう際はこれを選択します。
自費診療の白い素材によるインレー修復
・セラミック
・ハイブリッドセラミック
・ジルコニア
などがあります。(被せ物の場合にはメタルボンドセラミックやジルコニアセラミックもありますが別の機会に。)
いずれも
白い素材で見た目が金属に比べ自然です。
アレルギーが出ることはほぼありません。
自費診療ですので型どりに寸法安定性が良いものを選択できます。
割れたり欠けたりすることがあります。
金属に比べ歯の切削量はかなり多くなります。(薄めに入れると割れます)
費用は36000円~55000円+taxです。
ここからは個別の特性ですが、
セラミック
透明感があり色調は最も歯に近いです。
表面も滑らかで変色や変性(劣化)しない材料です。
固いゆえに薄いと割れやすい(ガラスや陶器のイメージ)性質もあります。
ハイブリッドセラミック
セラミックとレジン(プラスチック)をハイブリッド(掛け合わせ)した素材です。
分類上はレジンになります。
セラミックやジルコニアに比べ製作にかかる費用を抑えることが出来ます。
色調において透明感はやや劣りますがインレーの場合あまり問題になりません。
経年的に摩耗や面荒れを起こしプラークが付きやすくなります。
咬む力が強い方や歯ぎしりがある方では割れることが他の2つに比べ多いように思います。
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ジルコニア
白い素材では最も割れづらい性質を持ちます。
劣化はしないので耐久性に優れます。
色調は最も透明感にかけるので、歯にジルコニアインレーを付けるとツートンカラーになってしまう可能性があります。
そのため見た目を重視する方には使えないこともあります。金属じゃなければいいというような方で歯ぎしりが予想され他の素材では割れることが予想される場合などに適応となります。
保険診療の白い素材によるインレー修復
ハイブリッドセラミック(CAD/CAM)
自費診療のハイブリッドインレーとほぼ性質は変わりませんが、こちらは製作方法はブロックから機械で削りだしています。
グラデーションがつけられないことと、機械に作らせるため歯を削る形もなるべく単純な形にする必要があります。(削る量が大きい)
費用は保険点数に準じますが3割負担の方で5千円くらいです。割れてしまった場合の保証はできませんので再製作にも同じ費用が掛かります。
最近保険診療に導入されたため長期予後についてはデータがありません。
まとめ
詰め物一つとってもこれだけ種類があり、御自分で選ぶにもいろいろ考えることでしょう。
かみ合わせなどによっては選んでいただいても施術できないケースもあり得ます。
臨床では総合的に診察したうえで、御希望をお聞きしてそれに沿うものをおすすめしております。
ご参考になれば幸いです。